外国の入国制限緩和の動きと日本の動きを比較すると、見えてくる鎖国日本の現実。【編集人裏話】

編集人ブログ

日本政府によれば、安心安全な外国は一つもありません

外務省の「海外安全ホームページ」の中にある地域別の海外安全情報を参照すると、2021年10月現在で安全な外国は一つもありません。欧米諸国を含め、ほとんどの国はレベル3(渡航は止めてください・渡航中止勧告)となっています。アメリカ本土のみではなく、ハワイも同じくレベル3です。逆に中国や香港・マカオ・ベトナム・ラオス・台湾・韓国・北朝鮮はレベル2となっています。これらの国々は外国人に対する入国制限が厳しい国ばかりです。外務省の示す危険基準が何を根拠にしているのか、説明を求めたい気持ちが非常に強いですが、外務省(日本政府)としては海外旅行は今しばらくの間は中止せよというのが、基本方針だという事がわかります。政府が渡航自粛の要請を強調する書面はこちらを参照してください。また、外務省の発信する情報は、「海外安全情報」と「感染症危険情報」の2通りがあります。「感染症危険情報」はWHO(世界保健機関)が策定する国際保健規則がベースになっています。外務省のホームページはビジュアル的には非常に見づらいのですが、渡航するにあたってはとても重要な情報になります。

ワクチン接種率が向上しても、依然厳しい日本の水際対策

海外旅行再開へ向けての最大のネックが日本帰国時の水際対策になります。ワクチン接種完了を条件に、帰国後の自宅待機期間が14日間から10日間へ短縮になりましたが、海外旅行へ行った後に10日間も会社や学校を休める人はそう多くはないのが現状です。厚生労働省が今の水際対策を緩和もしくは解除する方向へ進むのは、一体いつになるのでしょうか?まだまだ先が見通せない状況が続いています。第6波もしくは新種の変異株が海外から侵入することに備えての、厳しい措置の継続だということが伺えます。

日本帰国後の自宅待機(自己隔離)期間が14日間から10日間へ短縮。日本の水際対策、10月から条件付きで緩和へ。

入国制限を緩和する諸外国

米国は全ての外国人に対し、ワクチン接種完了を条件に、隔離措置なしでの入国を11月8日から認めると発表しました。アジアでは、タイが11月1日からワクチン接種完了を条件に46の国と地域を出発する外国人に対し、隔離措置なしの入国を認める政策を発表しています。世界的にワクチン接種が進むなか、諸外国では厳重な国境封鎖から、徐々に入国制限を緩和する動きが出始めています。

11月8日より米国(アメリカ)渡航の際は、ワクチン接種完了が入国の必須条件として義務化に。

タイ・バンコク、入国制限緩和へ。11月1日より日本人も隔離措置なしで入国が可能に。

昨今では、各国の入国制限を一度に俯瞰できるようなWEBサイトも登場しています。これから海外旅行を計画する人にとって、どの国が入国制限を緩和もしくは解除しているかがいっぺんに確認できるサイトです。ITリテラシーの向上には驚くばかりです。以下は、カナダ・トロントを根拠とするVisa Run Inc.の「Sherpa」というサイトです。下部の言語選択で、日本語表記も選べるようになっています。隔離措置なしで入国できる国や、入国自体を拒否している国をまとめて確認することができます。これは、旅行業に従事し、今後の旅行商品を企画する人達にとっても大変参考になるサイトだと思います。この地図を見ても、アジア・オセアニア諸国は他の地域に比べまだまだ厳しい入国制限を行っていることが分かります。それに比べ、欧米諸国は次々と入国制限を緩和し始めました。(サイトURLはこちらを参照してください。)

*比較資料として、外務省が発表する各国の入国制限情報はこちらを参照してください。

外務省の言い分

再び外務省の話題に戻ります。「海外安全ホームページ」の中の「感染症危険情報とは?」に掲載されている一文が、今の外務省のスタンスを如実に物語っているので、以下にご紹介したいと思います。仮に諸外国が入国制限を緩和しても、日本を取り巻く今のコロナ過の状況では、旅行会社が起死回生のために海外旅行のパッケージツアーや手配旅行を敢えて実施することは、外務省の立場としては「危険な商業行為だ」ということになるのでしょう。特にレベル3(渡航中止勧告)に指定された国への旅行は中止するように強く要請しています。敢えて旅行会社が海外旅行を企画・実施する場合は、相当厳しい「責任」を追うことになりそうです。また、個人で旅行手配を行う場合は、「自己責任」を求められることになります。

危険情報が出ても自動的に旅行会社の企画旅行が中止になることはありません

旅行会社は,外務省が発出する危険情報やそのレベル・内容にかかわらず,自己の責任において企画旅行の実施を判断しています。

旅行会社によっては,外務省の危険情報のレベルに応じて,企画旅行の旅行の取り止めや顧客からのキャンセル料徴収の要否を決めているようですが,これらは旅行会社が自らの判断で行っていることです。 国民の皆様から外務省に対して,「危険情報のレベルが低いから旅行会社からキャンセル料を取られてしまう。レベルを上げて欲しい」といった要望や照会が度々あります。しかしながら,外務省は,前述のとおり国民の安全(生命・身体への影響)を判断基準として危険情報を出しているものであり,キャンセル料の問題を始め旅行契約に関する事項はあくまでも,旅行会社と顧客との間で解決すべき問題ですので,この点はご理解頂きたいと思います。

信頼性の高い旅行会社は,当然のことながら顧客の安全を第一に考えるものです。旅行会社を選ぶ際には,料金の安さばかりではなくその会社の安全対策についての考え方(現地の安全に関する情報をきちんと提供してくれるか,どういう判断基準で企画旅行を中止するのか,また実施する際にはどういった安全対策を行うのか等)を事前に十分聞いた上で,判断することが大切です。

なお,旅行業界では観光庁の指導の下,旅行安全マネジメントを推進しており,日本旅行業協会(JATA)では海外旅行の安心安全な実施のためのガイドラインを策定しています。

*外務省「海外安全ホームページ・危険情報」より抜粋。
*原文はこちらの文末を参照してください。
*太字部分及びラインマーカー部分は、記事執筆者の個人的判断による強調です。

【2022年最新版】海外旅行中にコロナウィルスに感染してしまった場合の対処方法【ハワイ編】

日本はまだ鎖国状態です。

法務省・出入国在留管理庁のホームページを参照すると、日本はいまだに160の国と地域に滞在歴のある「外国人」の日本上陸を拒否している状態です。日本に入国できるのは、海外から帰国する「日本人」と再入国許可証を所持する「永住者」・「永住者の配偶者」・「日本人の配偶者等」・「定住者」のみです。技能実習生や留学生ですら、日本へ入国出来ない状態が続いています。インバウンドの復活などは、まだかなり先の話になりそうです。日本の水際対策(帰国後10日間もしくは14日間の自宅待機措置)の緩和もしくは解除も、容易ではなさそうです。

*2021年11月8日付で、入国制限が一部緩和されました。

日本の水際対策。ビジネス目的の日本人帰国者に対し、自宅待機期間を3日間に大幅短縮へ。

この状況はいつまで続くのか?

残念ながら、予測できません。仮に日本の水際対策が今よりも緩和もしくは解除され、海外との往来が復活したとしても、外務省の危険情報が「レベル3」のままでは、安心・安全な海外旅行には程遠い状況が続きます。縦割り行政で定評のある日本政府(厚生労働省・外務省・法務省)が足並みを揃えて、海外旅行解禁に向けて動き出すとはとうてい考えられません。自由な海外旅行の再開に向けては、乗り越えなければならない高いハードルがまだまだたくさんあります。そして、これが鎖国日本の現実です。日本政府が描く、未来へ向けたロードマップが現状では無いに等しいのです。

JAL・ANAや外国系航空会社が、コロナ後を見据えて続々と増便を発表し始めましたが、飛行機に乗るのも、海外へ渡航するのも全て「自己責任」の範疇になります。少なくとも外務省が危険情報を「レベル1」に下げてくれない限り、旅行会社は旅行商品の企画すらできない状況が続きます。今のところ旅行会社は、厚生労働省と外務省と法務省によって、完全に息の根を止められていると言っても過言ではありません。出口が見えないまま、じっと耐える日々が続きます。

海外渡航情報は絶えず変化しています!

新型コロナウィルス感染状況の変化により、日本のみならず、世界中の国々が頻繁に隔離政策や出入国情報を変更・訂正しているのが現状です。当サイトでは最新の情報をお伝えするべく、日々情報の更新を行うよう努めておりますが、各国政府の政策発表がその更新スピードを上回るケースも見受けられます。実際に海外へ渡航する予定のある方は、外務省・厚生労働省・法務省・在外日本国大使館・JETRO・JICA・各国の政府観光局・利用予定航空会社などが発表する最新情報を必ず確認していただき、絶えず情報を修正することを強くお勧めします。理由の如何に関わらず、当サイトに掲載されている情報によって生じるいかなる損害についても、編集人および運営会社は責任を負わないものといたします。

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