【2022年11月1日追記】日本の水際対策緩和に伴い、VISIT JAPAN WEBは大幅に機能が改善されました。詳細は、下記の記事を参照してください。
デジタル庁は、海外から帰国する日本人や訪日外国人が、税関や検疫など日本入国の際に必要な手続きをデジタル化するサービスを、2021年12月20日から開始すると発表しました。この新しい入国支援システムは「Visit Japan Web サービス」といいます。帰国時の到着空港での税関審査や検疫審査の簡易化を目指して開発されました。デジタル庁が発表した操作説明書はこちらを参照してください。(説明書は全部で54ページあります!)なお、この情報は12月上旬時点での情報が元になっています。今後、システムのバージョンアップに伴い仕様が変更になる可能性がありますので、ご注意ください。
このシステムはアプリ対応ではありません。ブラウザから手続きを行う必要があります。デジタル庁ではスマートフォンで利用する場合、AndroidではGoogleクロームを、iPhoneではサファリを、PCではGoogleクロームかエッジの利用を推奨しています。
URLはこちらを参照してください。 インストール用QRコードはこちらになります。
目次
初期登録手順
初期登録手順として、アカウント登録を行う必要があります。メールアドレスとパスワードを入力して、アカウントを登録してください。なお、このシステムを利用する際は、1人につき1アカウントが必要になります。家族連れなど複数名分のアカウントを取得するためには、1人ずつ異なるメールアドレスを使用し、アカウントを作成しなければなりません。
下部、「新規アカウントの作成」ボタンをクリックすると、メールアドレスを登録する画面になります。役所らしいシンプルな画面です。メールアドレスを記入し、送信するとそのメールアドレスに「仮パスワード発行」の案内がきますので、登録したメールアドレスと仮パスワードを記入し、ログインすると本パスワード登録画面に切り替わります。本パスワードを設定して、手続きを開始してください。尚、本パスワードの登録には以下の取り決めがあります。
※パスワードは10文字以上、24文字以内、半角英数字、記号(使用可能文字は+-*/=.,:;`@!#$%?|~^()[]{}_です)を使用してください。
※英字は大文字と小文字を区別します。英字大文字、英字小文字、数字、記号はそれぞれ1文字以上使用してください。
来日準備の手続き(日本入国の手続き)
1.検査証明書のアップロード
一番最初に登録する書類は、PCR検査陰性証明書(検査証明書)になります。帰国時に現地を出発する72時間前以内に取得した、「検査証明書」をアップロードする必要があります。検査証明書は日本帰国時にパスポート同様に絶対に必要な書類になります。
なお、アップロードするためには、検査証明書をPDFファイルに変換する必要があります。jpegやpngファイル(いわゆる写メなど)のファイルはアップロードすることができません。海外滞在中に紙の書類をPDFファイルに変換する「すべ」を持たない場合は、選択画面で「紙で持参する」を選択し「次へ」ボタンを押してください。「次へ」ボタンを押すと、「出国前72時間以内に検体採取した検査証明書が必要です」「日本入国時に検査証明書の提示を求められます。必ず検査証明書を持参してください」という注意事項が表示されます。注意事項を確認の後、「合意して完了する」ボタンを押してください。この操作を行うことにより、基本情報の登録画面に進むことができるようになります。
「未登録>」の部分をクリックすると、次の画面になります。
2.基本情報の登録
姓名・生年月日・パスポート番号・日本入国予定日・日本国内での住所(連絡先)などの情報を入力します。入力できる文字は半角英数字のみです。姓名はパスポートに記載された英語表記で記入する必要があります。住所も英文で記入します。
3.このシステムで申請可能な項目
A. 検疫質問票登録
厚生労働省が管理する質問票WEBサイト(外部サイト)に遷移します。質問票WEBサイトの入力手順はこちらを参照してください。画面に沿って回答を進め、回答が完了するとQRコードが表示されます。なお、前出「基本情報の登録」で登録した個人情報はこのサイトには引き継がれません。氏名・生年月日・日本入国日などの情報は最初から入力する必要があります。
B. 外国人入国記録
日本人及び再入国する外国人は入力不要です。
C. 税関申告登録
税関申告登録でも、「基本情報の登録」で登録した個人情報はこの登録画面には引き継がれません。再びパスポート番号と氏名(ここでは漢字で氏名を記入)そして職業(選択式)を記入する必要があります。その後、入国日・搭乗便名・出発地・同伴家族の有無・日本での住所・電話番号などを登録します。3度手間ですが、システム全般の運営はデジタル庁、検疫審査は厚生労働省、税関審査は財務省の管轄にあるため、役所間の情報の共有はまだ難しいのかもしれません。デジタル化とは名ばかりの煩雑さです。税関申告で確認や申告が必要な内容は次の通りです。
- 麻薬・銃砲・爆発物等の日本への持ち込みが禁止されているものに関する確認事項
- 肉製品・野菜・果物・動植物等の日本への持ち込みが制限されているのもに関する確認事項
- 金地金または金製品に関する確認事項
- 免税範囲を超える購入品・お土産・贈答品などに関する確認事項
- 商業貨物・商品サンプルに関する確認事項
- 他人から預かったもの(スーツケースなど運搬用具や理由を明らかにされずに渡されたもの)に関する確認事項
- 100万円相当額を超える現金・有価証券または1Kgを超える貴金属の所有に関する確認事項
- 別送品に関する確認事項
- 携行品の登録(入国時の携行品に酒・たばこ・香水が含まれている場合の数量を入力)
- その他入国時に持ち込む品目に関する登録
各項目の登録が完了すると、「QRコードを生成する」というボタンが出ます。入力内容を確認し、同意するとQRコードが生成されます。到着空港の税関審査でそのQRコードを利用し、電子申告を受けることになります。
電子申請のメリットは?
ここまで、「Visit Japan Web サービス」の現在発表されている内容をたどってみましたが、日本人帰国者にとってのメリットがどこにも見当たりません。逆に手間が増えただけのような印象です。電子申請に移行するにあたって、現行紙ベースでの提出が義務付けられている「税関申告書」は当面併用で利用が可能です。羽田税関に確認したところ、紙の税関申告書は在庫が沢山余っているので、当分の間は利用するとのことでした。紙ベースの税関申告書は2分で記入できます。2重3重に個人情報を登録しなければならない電子申請にはどのくらいの時間がかかるのでしょう?
厚生労働省が管理する検疫質問票WEBサイトは既に到着空港で運用されています。現在でも帰国(入国)時にWEB申請し、QRコードの提示を求められているため、このシステムに組み込まなくても単独で利用することが可能です。
既に存在する税関申告アプリ
さらに厄介なことは、日本税関は既に「税関申告アプリ」の運用を開始していることです。上記の「税関申告登録」とは全く別の仕組みです。こちらはアプリ対応のため、一度入力した氏名・パスポート番号などの個人情報は2度目・3度目に税関を通過する際も、そのまま引き継がれます。毎回、免税範囲内で税関審査を通過する人は、このアプリを使った方がよほど利便性は高いと言えます。アプリ申請で取得したQRコードとパスポートを電子申告端末にかざし手続きを済ませ、手荷物を受け取った後は顔認証を利用した電子申告ゲート(Eゲート)を通過することによって、税関申告が完了します。これだけの仕組みが出来上がっているにも関わらず、今回の「Visit Japan Web サービス」では、入国者に新たな入力手順を踏むことを求めています。羽田税関と成田税関に確認したところ、「Visit Japan Web サービス」で表示されるQRコードを利用した場合も、「税関申告アプリ」を利用する時と同じ手順で電子申告端末と電子申告ゲートを利用することが可能になるそうです。当面は紙ベースの申告書も含め、3通りの手続き方法で税関審査が行われることになります。「Visit Japan Web サービス」は利用者の利便性向上のために構築されたシステムだと思われますが、現状では煩雑な手間を増やすだけのシステムになっています。
スマホがなければ海外旅行ができない時代に
コロナ過で海外へ渡航することが大幅に制限され、出入国に関する情報も限られたものになってからほぼ2年の月日が経過しました。その間、東京オリンピックの準備段階で、日本の国際空港では出入国管理の電子化が進んでいます。航空会社のカウンターも自動チェックイン化が進み、人を介した手続きから機械を介した手続きへと移行しつつあります。また、世界的に出入国時の提出書類や健康状態の申告を電子化する動きが進んでいます。今後はスマートフォンがなければ、海外旅行ができない時代がやってきます。日本でも、帰国時にはMySOSやCOCOAなどのアプリのインストールを求められ、スマートフォンを所持していない旅客は、空港でスマートフォンをレンタルしなければならないようになっています。今回発表された「Visit Japan Webサービス」はアプリ対応していません。海外からくる外国人のインターネット環境が、日本到着時には脆弱だろうと言うのが、アプリではなくブラウザを介してのシステム登録の理由になっていますが、かたや厚生労働省はMySOSアプリのインストールを求めています。この辺のちぐはぐさは関係省庁間で統一して欲しい事項になります。いずれにせよ、海外旅行時にはスマートフォンと世界中で繋がるインターネット環境が必要になってきます。
今回発表された「Visit Japan Web サービス」もバージョンアップを重ねて、省庁間の壁を乗り越えて、将来的には使い勝手の良いシステムになることを望むばかりです。